カテゴリー : non fiction

記憶にであう―中国黄土高原 紅棗がみのる村から

記憶にであう―中国黄土高原 紅棗がみのる村から
大野 のり子
未来社
売り上げランキング: 692,154

久しぶりにとても良い本に出合えたと思いました。

著者は2005年から生きていくのにも決して楽とは言えない中国黄土高原の僻地に独りで住み
地元の方の信頼を得て、日中戦争時代の証言を集めている女性です。
燼滅作戦(三光作戦)の被害を受けた土地で、当時を知る老人たちから
それらの話を聞き、映像に収めていくという活動は本当に大変なことだと思います。
そうして集めた写真や証言をまとめてある本です。

といっても、この本の素晴らしいところはその証言に何ら著者の考えや意見を加えることなく
淡々と綴られていること。
日中戦争の話とは関係なく、著者自身がその地で見聞きしている
現在の村の様子や習慣などを描いていること。
厳しい環境の中で逞しく生きる人々の姿が描かれています。
そして何よりも素晴らしいのが「老天使」の笑顔がとても素敵なこと。

「老天使」は、おそらく証言をしてくれているお年寄りたちだと思います。
辛い記憶を引き出して話してもらうまでには
相当の信頼関係を築かなくてはならなかったと思われます。
そうして著者が写真に収めた老人たちの笑顔は本当に「老天使」とも言える
生きてきた証を誇るような皺が深く刻まれた純粋な笑顔でした。

元々は著者の方のブログを知ったことがきっかけでした。

黄土高原 紅棗がみのる村から

この本は本当に多くの方に知って欲しいと思います。

「昭和史」と「あの戦争と日本人」

昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー)
半藤 一利
平凡社
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昭和史 戦後篇 1945-1989 (平凡社ライブラリー)
半藤 一利
平凡社
売り上げランキング: 2,008

毎日何かしら本は読んでいるのですが、すっかり本関連のエントリは更新がご無沙汰に。(^^;
とても有名な著書なので今更感がありますが、改めて。

若いころはなんちゃってバックパッカー状態でヨーロッパを中心にまわっていました。
アジアほどではないですが、ヨーロッパでも日本人だと言うと
戦争の話などを振られることもボチボチあったりして
好意的な感じであれば良いのですが、そうではないことも多くあったり・・・
中でも一番忘れられないのはロンドンのローカルなパブで出会ったおじいさん。
若いころに日本軍の捕虜になっていたそうで
最後は和解したものの、日本人だと言うだけでかなりキツイ思いをしました。
(要は水をぶっかけられたのですけど・・・;)

ここ数年はアジア、中華圏を中心にまわることが多く
ロンドンのパブであった出来事ほどキツイ思いはすることはないものの
日本が行ってきた跡を目にすることも増え
特に各地で現地の友人ができればできるほど
日本人として知らないというのはまずいんじゃないか?と思う気持ちが強く・・・

この本はその昭和、日本の近代史を分かりやすく説明していると思います。
近代史の講義という形態をとっているため、語り口調で柔らかく
大まかな流れに沿って理解していくことができます。
歴史って流れがわからないと本当に理解が難しいのですが
そういった意味ではとても分かりやすく、秀逸な本だと思います。

歴史について教科書問題といったことや
日本は嘘は教えていないけれど(実際は都合よく変えている部分もあると思いますが)
大事なことも教えていないと私は思います。
歴史というのはその時代の強者が作るものであったり
当時と価値観も変わってきていることもあり
実際にその場で見て体験しても正確に理解できるかというと、できないものだと思いますが
やはり日本人として何があったのか、どうだったのかは理解しておくべきだと思います。
そして、その歴史から真摯に学んで、未来に活かすことも。

この本(というか著者の方?)には色々な評価があるようで
右な方からは自虐史観だとか、史実に沿っていないといった批判もあるようです。
確かに日本は本当に情けない、酷い戦争を仕掛けたという論調で進んでいきますが
私はそれに違和感はありません。
著者は戦中に生まれて、戦後を生きてきた人間として
日本の行ってきたことをそう認識したというのも事実です。
大事なのは当時の価値観との違いやその時代を過ごしてきた人がどう思い、判断しているのか
自分とは違う(としたら)考えを理解し、それも1つの考えとして尊重すべきだと私は思います。

一部のマスコミや報道、右の方による日本は悪くなかった的な論調も
かつてはそうなんだ・・・と読み漁って、戦争に負けると何でも悪くなってしまうんだなとか
東南アジアの多くの国では感謝されているのに、どうして一部の国だけ反日なんだろうとか
そう思っていた時期もありました。
でも、実際には都合の悪いことを報道していないだけで
東南アジアで日本に感謝しているのは一部の国だけですし日本が嫌いな国も結構あります。
親日だと言われている国であっても、実際に行くと結構違います。
そして「反日の国」に対して酷いことをしたのは事実でもあります。
もちろん細かい部分の認識の違いはありますが、やったことはやったこと。
見たくないものは見ずにいってしまっては未来に対して何の進展もないのではと私は思います。

あの戦争と日本人 (文春文庫)
半藤 一利
文藝春秋 (2013-07-10)
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昭和史に続いて是非読んでいただきたいなというのがこちら。
分かりやすさはそのまま、流れるようにその後の日本の様子が分かります。
人がいかに流されやすく熱狂しやすかったのかということも含めて。

この著者の幕末史も読んで見たいと思っています。

幽霊を捕まえようとした科学者たち

幽霊を捕まえようとした科学者たち (文春文庫)
デボラ ブラム
文藝春秋
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Duncan MacDougallが行った霊魂の重量を計測する実験など
そういった科学的な内容かと思って手にとったのですが
そうではなく心霊現象研究の歴史といった内容です。
心霊現象研究協会 (The Society for Psychical Research)の歴史といった方がいいかもしれません。

ダーウィン、ウォレスから始まり、ヘンリー・シジウィック、ウィリアム・ジェイムズと続き
宗教観の強い当時においては
それを覆してしまうような心霊現象研究がいかに困難であったかが分かります。

日本で心霊研究と聞くと胡散臭そうと思ってしまうのですが
本書に登場する人たちは真摯に向き合っています。
また、その当時、交霊(降霊?)会が一種の流行だった時期でもありました。
そんな中、彼らはそれらの殆どがイカサマであることを証明していきます。

心霊現象研究の歴史というだけでなく、科学と宗教の対立の歴史でもあります。

無実

無実 (上) (ゴマ文庫)
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ジョン・グリシャム
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無実 (下) (ゴマ文庫)
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ジョン・グリシャム
ゴマブックス
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ジョン・グリシャムのノンフィクションです。

オクラホマで起きた冤罪事件が題材です。
流石、ジョン・グリシャムといった文章で一気に読ませられます。
実際にあった話なのに、下手なミステリーより面白いです。
(ノンフィクションの冤罪事件の話なので、面白いと言って良いものかどうか分かりませんが・・・)

本当にノンフィクションなの?と思う程に稚拙な捜査、手続きの連続で
事実は小説より奇なりとは良く言ったものと、妙な所で納得してしまいました。
これが事実というのですから、本当に恐ろしいとしか言えないです。
日本でもありましたよね、冤罪事件。
何とも色々と考えさせられる所が多い本でした。

ダライ・ラマ自伝

ダライ・ラマ自伝 (文春文庫)
ダライラマ
文藝春秋
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ダライ・ラマがご自分の言葉で書かれた自伝です。
少し前に発行されたものですので、最近の内容ではありませんが
分かりやすい文章と、宗教指導者に良くありがちな価値観の押し付けがなく
非常に好感を持って読むことが出来ました。

宗教だからという事ではなく、その枠を超えて、人として大きな方だと思います。

無宗教の私ですら、とても良い本だと思います。
あまり私の書評を書きたくない(書かない方が良いかと;)と思う程に素晴らしい本です。

個人的にはチベット仏教は論理学であるという内容が気になっています。
時間が出来たら調べてみたいです。

子供たちは森に消えた

子供たちは森に消えた (ハヤカワ文庫NF)
ロバート・カレン
早川書房
売り上げランキング: 120464

書店店頭で何か面白い本は無いかと探していたら
平積みになった本の帯に
「この事件が『チャイルド44』を生んだ!」
とあるのを見て、あまり深く考えず購入しました。

この本はチャイルド44のモデルになったレソポロサ連続殺人事件のフィクションです。

フィクションなのですが、ノンフィクション小説ではないかと思う様な内容で
とても現実に起きた事とは思えないというのが正直な感想です。
良く出来たミステリー小説みたいでした。

内容の残酷さだけでなく、当時のソ連邦の一端を知る事ができます。
民警の状態や一般市民の暮らしぶりなども含めて、非常に興味深いものがありました。

正直、あまりの残酷さによく考えずに購入した事を少し後悔したりもしましたが
結果的には興味深く読む事ができました。

昭和天皇のお食事

昭和天皇のお食事 (文春文庫)
渡辺 誠
文藝春秋
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書店店頭で見かけて面白そうと思って手に取りました。

宮内庁管理部大膳課にお勤めになっていた著者が
食を通して昭和天皇を回顧している内容になっています。

大膳の方々がいかに心と手間を尽くして
昭和天皇や皇族、国賓の方々をもてなしているのか
その部分だけでも想像以上でした。
限られた予算内でやりくりし、陛下の健康を気遣い、
プロの仕事の一部を垣間見た感じがします。

また、所々に紹介されている陛下の様子も微笑ましく、
昭和の時代が懐かしく思えたりしました。

父の仕事の関係で、昭和天皇の頃にお裾分けを頂いた事が何度かありました。
クリスマスは七面鳥のローストだったり・・・
頻繁ではないですが、いつもとても美味しかったのを覚えています。
子供だった私は
天皇陛下はいつもこんな美味しいものを食べていらしゃるんだなぁ
なんて思っていました。
#誰かが毒を仕込んでいたら死ぬのは私かもと思ったりしたのは内緒です。(笑
実際はとても質素なお食事を好まれていたとの事で
子供の頃のイメージと随分違う、陛下の様子には色々な意味で感慨深いものがありました。

著者が本当に陛下を敬愛されていたのが、読んでいて良く分かります。
私にとってはとても面白い本でしたが、
それは著者のその「気持ち」が伝わってくるからかもしれません。
読み終わってとても優しい気持ちになりました。

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INFORMATION

読んだ本についての勝手な書評です。
ジャンルはあまり問わずに色々読んでいます。どちらかというと外国人著者の方が好きだったりします。
"technical books"は本職のIT関係本です。