茶農家さんCの漳平水仙です。
桂花香型の伝統的な製法を守って作られているタイプの2014年のものです。
物価の上昇が激しい中国ではお茶の価格も当然ながら上昇しているのですが
この漳平水仙も例外ではないようです。
それでも中国国内でもあまり知られていないお茶ということで
他のお茶、特に青茶の中では比較的上昇が抑えられていた方だったのですが
やはり人件費の上昇でしょうか?今年は随分価格が上がりました。
また、ここ数年、漳平水仙をマイナーな地方茶ではなく
ちゃんとブランド化を目指していこうという動きもあり
そのあたりも影響したのかなとも思っています。
ただ、このブランド化の動きは価格上昇という、ちょっと残念な方向の変化だけでなく
製茶技術の向上という良い面での動きもあったようです。
というのも今年の漳平水仙は驚く位に良く出来ています。
中国で試飲した際に正直、かなり驚かされました。
こういったお茶に対して盛り上がるというか
今まで食べていくのに精一杯で作り続けていたお茶が
実は充分に市場価値を持っていて、立派な農産物として戦うことのできるものだったと気がつくのが
遅い時期に来るお茶というのは概してとても良い結果をもたらすように思います。
今の時代では無農薬栽培のお茶は実際少ないのですが
今まで儲からない、お金が無いということで農薬を使わずにきていたのが
いざ、お金が集まるようになって農薬や化学肥料の導入を考え始めた際に
「無農薬の方が高く売ることができる」という常識が伝わってきているので
(中国はとても広いので教育面の問題などもあり、日本のそれとは全く事情が違います)
作り手自らある程度の知識を持って選択できるようになります。
既に農薬や化学肥料の導入をしてしまった土地の場合は転換がとても大変です。
この漳平水仙はその転機が遅い方だと思います。
問題は今後の人件費の上昇です。
こちらはどうなっていくのか見守っていきたいと思います。
いつもと変わらない四角い餅状の茶葉です。
五色茶のようなカラフルな色合いで、白亳も確認できます。
今年は茎がかなり少なめ。おそらく仕上げで取り除いているのだと思います。
細やかな艶があり、全体が産毛のような白亳に包まれているのが分かります。
爽やかな花香がとても良く感じられます。
この形状ですので鑑定杯は使用していません。
薄い黄金色の水色です。
透明度、亮度共に非常に高いです。
香りは高い花香。それと甘い乳香も感じられます。
味わいは爽やかな甘味、ミネラル感、奥行きの深い滋味があります。
非常に上品にまとまっていて、今年は見事だなぁと感心するようなバランスの良さ。
甘味の質が花の蜜のような軽やかで爽やか、それでいて深みも感じるので
子供の頃に遊んでいて舐めたツツジの蜜を思い出します。
回甘も充分。しかも爽やかに戻ります。
この爽やかさが今年は随分良く出ていると思います。
漳平水仙は清香型の安渓鉄観音に例えられることが多いのですが
実際にはかなり違います。(清香型の安渓鉄観音が苦手です;)
鉄観音は製法上の理由でザラつきのある味わいになりますが
漳平水仙にはそのような感覚はありません。
煎を進めていくと桂花型らしい桂花香が目立ってきます。
味わいもよりぐっと深くなってきて、爽やかさは失わずに奥行きのある味わいへ。
心地よい柔らかい酸味も出てきて、ちょっとこの変化には唸らされる感じ。
今年は本当に良い出来です。(^^
煎持ちが良いのも特徴です。
1個あたり10g前後はありますので、15煎は余裕で楽しめます。
人数が少ないと確実に飲みきれないので、私の場合は楽しんだ後は水出しにします。
考えて見ると相当な液量を楽しめるお茶ですね・・・
艶やかで弾力のある葉底です。
意識して茎はかなり取り去っている様子が伺えます。
醗酵は結構しっかり行われています。
葉の大きさも比較的均一のようです。
砕けというよりも、しっかりと揉捻されている茶葉は
閩南の製茶方法に通じているものを感じさせます。
今年の漳平水仙は製茶技術をぐっと向上させてきたような感じです。
今後も楽しみなお茶です。