メーカーさんIの慧苑坑 千里香です。
2014年のサンプルをいただきました。
千里香というと千里先まで香りが届くと例えられる程の香りの良さが身上ですが
それはちゃんとした所で作られた正岩茶の話で
中国国内であっても大抵の千里香は現在の正岩地区のものだったりして
大概香りはそこそこだったりします。
このメーカーさん、代々武夷山で茶業をしている親族の集まりなので
(むかしから武夷山で茶業さんをしている方には多いです。このパターン。)
メーカーといって良いか、作り手さんとするべきか悩むような規模ではありますが
その中で懇意にしていただいている方の奥様の母方の親族が
慧苑坑で結構な広さの畑を持っていて、この千里香はそこの畑から作られたものです。
艶やかな綺麗な茶葉です。
黒褐色を基調に褐色、緑褐色が混じった、清香系の仕上がりと思わせる外観です。
茶葉の大きさは小さ目で比較的均一。
立体感のある茶葉は見るからに丁寧に製茶されているのが分かります。
とても上質なものなので鑑定杯は使用していません。
黄金色の水色です。透明度、亮度共に文句なしの高さです。
香りは火の優しい香りと見事な花果香。高く綺麗に出ています。
トップノートは清らかな花香。次第に柔らかく深みのある果香に変化していきます。
なにより飲み干した後の杯底香がむせ返るように立ち上ってくるのは凄いです。
味わいは深みのある甘さと驚くほどのミネラル感。
かなり濃いめに茶葉を大量に使って淹れているせいもあって
慣れていない人はすぐにお茶酔いするんじゃないかなぁという位のパワーがあります。
これぞ岩茶といった感じ。
喉元を過ぎてからの余韻と回甘は本物の正岩茶(あえて言います;)ならでは。
果汁のような柔らかい酸味も微かにかんじられたり
味わいが非常に複雑なのも特徴的です。ちょっと凄いです。
清香系といえども軽すぎることもなく、重すぎることもなく
丁度良い火入れの塩梅はさすが。
こういった、じっくり美味しい清香系ってなかなか無いので素直にすごいと思います。
煎持ちも十分。茶葉の量にもよると思いますが
普段の自分の淹れ方で12煎は余裕で続いたので、かなり良い方です。
ふかふかの綺麗な葉底です。
ふっくらと肉厚、弾力が強く、艶やか。
火入れによる砕けはあるものの、基本的に大きさは均一。
発酵もしっかり行われているのが分かります。
なにより、葉底からもまだ香りがしっかり立ち上るのは凄いですね。