広東省のメーカーさんBの特级 英红九号です。
英徳紅茶をお探しするご依頼をいただいた際に集めたものの中の1つで
先にエントリしている英徳紅茶のメーカーさんとは違うところのものです。
2014年3月の摘み取りです。
黒褐色の艶のある茶葉に金毫が混じっています。
大きさは中程度で均一。砕けも殆ど確認できません。
爽やかな花香が微かに感じられます。
中国で鑑定杯を使用して確認しているのですが
持ち帰ってきたサンプルが少量のため、日本では鑑定杯を使用していません。
赤褐色の水色です。透明度、亮度共に十分に高いです。
香りは薬香を感じさせます。遅れて微かな花香。
味わいは柔らかい甘味と渋み、こっくりとした滋味が感じられます。
果汁のような優しい酸味も感じられます。
十分に美味しい紅茶ではありますが、何となく物足りなさも。
味わいの奥行が気持ち浅いんですね・・・
それとこの薬香が結構強くて気になります。(^^;
英徳紅茶はその殆どが欧州輸出向けであったということもあって
お茶の品質としてはあまり評価されてこなかったお茶なんですね。
硬水の地域が多い上にミルクや砂糖を入れて楽しむ用のお茶は決して品質が良い必要はなく
良く言えば基準が違う、正直に言ってしまえば品質の悪いもので十分。
そういった背景もあって、英徳紅茶に関しては製茶技術の改善というものから
近年までは遠ざかっていた印象があります。
ちょっと話は逸れますが、欧州向けのお茶の品質が良いものではないということには
考え方の違いが大きいとも思っています。
もちろん、楽しみ方が違う、水が違うということもありますが
概して欧州のバイヤーさんたちはお茶にも工業製品的な品質を求めるように思います。
つまり、どんなに不作の年でも安定して供給できるであろうレベルのものを希望します。
逆に日本やアジアでは一期一会ではありませんが、今年は良かった・悪かったというのを
楽しむというベースがあるので、このあたりの考え方は全く違います。
自然と戦う西洋文化と自然を受け入れる東洋文化の差でしょうか。
と、まぁこうして技術改善やブランド化といったものから取り残されてしまった感のある
英徳紅茶の状況だったのですが、ここ近年はごくわずかではありますが
ブランド化を目指そうとか国内流通を視野に入れたメーカーさんも増えてきて
かなり向上してきたなぁというのが正直な感想です。
先に紹介した金毫の英徳紅茶などは驚くほど高い品質ですし。
ただし、全てのメーカーさんがそうかというと、やっぱりまだまだな地域ではある訳で
このお茶も特級と言っていますが、普通だったら1級レベルですね・・・
どうも英徳紅茶のメーカーさんは級付が甘いところが多いです。
ちなみにご存知の方には当たり前のことですが、特級、1級というのは
基本的なガイドラインはお茶の種類ごとに大体決められているものの
実際の級付けをするのは各生産者に任されています。
普通は数年間分の各級のサンプルを標準葉として保管しておいて
それらを基準に級付けを行っていきます。
ですので、実際は生産者によってかなりばらつきがあります。
私が知っているメーカーさんは(英徳紅茶だけでなく中国紅茶全般ですが)
何でもかんでも特級とつけていますが、実際には2級でしょうに・・・というものだったり
まぁなんでも特級とつけてしまう場合が多いのも現実です。
煎を進めていくと気になっていた薬香も抜けて無臭にはなりますが
ちゃんと美味しく楽しめるようになります。
味わいも絶品ではないですが、一般的な英徳紅茶の中では美味しい方だと思います。
葉底は意外と好印象。
肉厚で若干硬さはあるものの、ちゃんと弾力もあります。
そこそこ嫩葉も入っていますし、大きさも大体均一。
発酵もしっかりちゃんとしています。
おそらく、この薬香はこの作り手さん、というかメーカーの癖なんだと思います。
というのも、中国の方で同じメーカーさんの別ロットを試飲しているのですが
その際にも共通するような香りを感じたので・・・
この薬香が好きという人には良いのだと思いますが
そもそも英徳紅茶に薬香はないので、難しいところですね。(^^;