鼎興號の1995年緊茶です。
香港乾倉のもので、台湾乾倉も少しだけあります。
鼎興號は勐海茶区の私人茶庄の1つで1930年に設立されました。
(私人茶庄については2001年 楊聘號に説明があります)
雲南省の紅河哈尼族彝族自治州蒙自出身の回族、馬鼎臣によって設立されています。
この地域は昔から回族(イスラム教を信仰する少数民族)が多い地域です。
そのため、鼎興號の中飛(お茶の中に埋め込まれている商標を印刷した紙)には
イスラム教のシンボルでもある星と月が印刷されています。
他の私人茶庄と同じく、一度その姿を消すことになりますが
鼎興號は1980年代に復活します。
消滅前から丁寧なお茶作りを行うことで知られています。
このお茶は野生茶樹、喬木型の大葉種から作られた春茶になります。
キノコのような形の固形茶は心脏型(心臓型)と呼ばれます。
今や班禅緊茶で有名な形です。
緊茶については1980年代後半 班禅紧茶(班禅緊茶)に少し説明があります。
艶やかで美しいお茶です。
茎の部分から芯芽までバランスよく配方されているような感じです。
白毫もしっかり確認できます。
成形はしっかり行われているようで、ボロボロと崩れる感じはありません。
といっても今で9年、あと10年もしたらボロボロになるんでしょうね。(^^;
緊圧は結構しっかりしています。(心臓型には多いですね)
爽やかな陳香のある茶葉で、しっかり熟成が進んでいます。
外側と内側の茶葉の配方は同じようです。
茎がしっかり入っているので甘いお茶なんでしょうね。美味しそうです。(^^
鑑定杯の使用は行っていません。
もはやそんなレベルでもないですし・・・
透明度が非常に高い赤褐色の水色です。
亮度も高く、まるでガーネットのような美しさがあります。
香りは綺麗な棗香、樟香が感じられます。
味わいは深みのある甘さ、奥行きのある滋味、桂園(龍眼)味のお手本のような
全くといって良いほど雑味のない綺麗な味わいです。
黴臭さといったようなものは一切無く、熟成技術の高さが伺えます。
美味しい。(^^
味わいの奥行きが凄くて、煎を重ねるごとに変化があります。
固形だったのが崩れてきて、まるで紅茶のような色合いに。
(濃い目に淹れたというのもあります)
柔らかくて爽やかでありながら深みのある甘味が美味しいです。
茶気も強く、回甘もしっかりあります。余韻が長いです。
更に煎を進めていくと上質な青茶ようなニュアンスも。
ミネラル感の感じが武夷岩茶の老茶に似た感じに出てきます。
そのうち清涼感も感じられるようになってきたりして
これは面白いですね。そして美味。
言うまでもなく煎持ちは非常に良いです。
1日では足りず、2日がかりで楽しみました。
濃い褐色の葉底です。
色からして良く熟成されているのが分かります。
1つ1つの葉は肉厚で熟成期間にも関わらず柔らかく弾力があるのに驚きます。
茎の部分から芯芽までバランスよく配方されているのが葉底からも分かります。
現在の茶葉の等級で言えば二級~四級までの茶葉になっていました。
近年にもこの心臓型の緊茶は作られているものの
復刻した班禅緊茶も含めて、美味しいと心の底から思えるものは少ないです。
(もちろん、好みもありますが)
そんな中、この鼎興號は久しぶりに納得の美味しさでした。(^^