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This article was written on 11 2月 2013, and is filled under delicious teas, 中華人民共和国, 雲南省, 黒茶 Dark Tea.

8592 中茶牌 熟餅 1996年

台湾の老師から譲っていただいた8592中茶牌の熟餅です。
1996年の製造で香港乾倉および台湾乾倉で保管されています。

8592なので熟茶、勐海茶厂(勐海茶廠)の出品で
天字餅とも呼ばれる傑作レシピのため、今も作られ続けています。
8592の説明は以前アップした2010年の新しい餅茶のエントリにあります。

レシピ通りに大きめの葉で構成された美しい餅面です。
かび臭さもなく、その跡もなく、良い状態で熟成されていたのが分かります。

配方は行われていません。
1990年代の孟海茶廠にしては珍しいとのこと。
配方というのは餅茶の表面に中身とは違う等級の茶葉を使って仕上げることをいいます。
見かけを綺麗にすることに使われることもありますが
熟成をより進めるために使われる手法でもあるそうです。

老餅の良い所は適切に熟成されていれば当然ながら本来の普洱茶の味と香りが楽しめますが
その保管場所によってもそれらが変化すること。
大きく分けて倉庫には乾燥した倉庫を指す乾倉、
熟成を早めるために湿度を上げた倉庫を指す湿倉の保管に分かれます。

この保管というのは普洱茶には非常に大事なもので、
乾倉、湿倉といっても単純に倉庫に保管しているだけということではありません。
これらの殆どは普洱茶の後醗酵によってお茶の質を加工する加工用の倉庫で
それらのある地域は大陸では広州、深圳、他には香港、台湾、マレーシアと限られます。
主流は香港と広州です。最近は香港の近くで深圳にも倉庫が作られてきましたが
面白いことに味わいが異なるため、深圳で最後まで保管することは少なく
ある程度熟成させたら香港へ移動することが多いそうです。
香港返還後にはまだ少ないものの台湾にも倉庫が作られました。
台湾では加工用ではなく、主に純粋な保管用としての倉庫が主流ですが
香港の中国返還を機に多くの普洱茶が台湾へ持ち込まれ、その流れで作られているようです。
マレーシアはかなり少なく、どちらかというと普洱茶ではなく六堡茶などが主流です。
昔は土に埋めて保存していたそうで、埋めて保管していた六堡茶は大変評価が高いもので
独特の風味と深さが出てきます。

近年作られている普洱茶で現在流通しているものは未入倉と呼ばれる
加工用の倉で保管されていないものが殆どです。
普洱茶ブームにより多くの人が普洱茶を求めるようになった結果、普洱茶自体の品薄と
今まで緑茶などしか飲まなかった人が
倉熟成された普洱茶本来の深みのある味わいをいきなり好むようになるわけでもなく
北京の方の人たちが好むのは倉熟成していない未入倉の普洱茶です。
これは普洱茶に限らず青茶にも同じことが起きていて、武夷岩茶や鳳凰単欉、鉄観音なども
どんどん醗酵も火入れも浅く、緑茶のような加工が主流となってきています。

乾倉は乾燥している倉ですが、加工用のため湿度は結構高い状態です。
外気を適度に取り入れて、最低でも50%、夏場は70%近くにも上がります。
湿度の高い地域で保管されていますので、特に湿度をコントロールしなくても
この程度の湿度になるそうです。
乾倉の中にはもう1つのタイプ、除湿を行った本当に乾燥している倉もあります。

湿倉は密封されたような状態で、茶葉などに直接水をかけたりなどして
強制的に加湿されている倉庫です。湿度は80%前後。
醗酵を早めるために行われます。
腕の良い茶商であれば最高の風味に仕上がりますが
一方で黴臭くさせてしまう茶商もいます。

どのタイプの倉も茶商の腕にかかっています。
お茶の状態を見ながら倉から出したり、倉の中の配置を変えたりしています。
倉から出して保管用の乾燥した倉庫で調整することも多くあります。

茶商によって風味が変わるのは倉熟成した普洱茶の醍醐味でもあります。
広東やマレーシアは少し土っぽい濃厚なタイプが多く
香港は爽やかな独特の陳香があるタイプが多いようです。(私は香港好きです)
普洱茶がどこで保管されていたか重要なのは、こうしたところにあります。

未入倉の普洱茶もいいのですが、やっぱり入倉した普洱茶の方が
今となっては少ないのですが(普洱茶全体の10%もあるかどうか・・・?)
味わいも深く芳醇になっているように思います。
文化ですよね。

未入倉の中でも主に北方の乾燥された地域で保管されたものは
すっきりとした飲みやすいタイプになることが多いようです。
ただし、普洱茶本来の芳醇さや味の分厚さが出にくいように思うことが多いです。

よく熟成されているので普洱刀などは必要なく、手で端から崩せます。
綺麗な黒褐色と褐色の茶葉は、良く見ると細かいつやがあります。
時折大きな茎も入っていますが、これが8592の甘さと旨みの元です。


蓋碗使用

綺麗な棗色の水色です。
熟成が進んでいるので透明度が非常に高く、亮度も高いです。
まるでヴィンテージものの古木から作られた赤ワインのようです。

かび臭さは全くなく、果実香が感じられます。
これ以上ない位に丸い甘さと複雑な分厚い旨みが凄く、まさに芳醇。
この深さと柔らかさは適切に熟成された老餅ならでは。
凄みすら感じます。

煎を進めていくと穀物のような、ナッツのような香りも出てきます。
旨みや甘さは変わらずに、どんどん洗練されていく感じ。
煎持ちはうんざりする程良いです。

7煎目を越えたあたりから、ぐっと更に甘さと旨みが増してきます。
これ以上甘くなったりなんてしないだろうと思っていたのですが
びっくりするほどに深い甘さが出てきます。
糖分の塊を溶かして飲んでいるようです。

15煎目を過ぎた頃から棗香も感じられるようになってきます。
茶質が出てくるようになり、茶水に粘性が出てきます。

熟茶の上にしっかりと熟成されているので葉の形状には戻りません。
とはいえ、葉の片鱗は確認できます。
弾力のある肉厚の葉が使われていて、所々にある茎も見た目とは裏腹に非常に柔らかいです。
葉底からも棗のような良い香りが出ています。

※参考資料
普洱藏茶 呉徳亮著 聯経出版事業股份有限公司
深邃的七子世界 陳智同著 五行圖書出版有限公司

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